昼食時のみの使用しか認めていなかったホールを、それ以外の時間でも利用可能とし、ミーティングや作業場として開放した。
設備として、可動間仕切、移動の簡易なテーブルを採用し、会議室としても利用できるようにしている。
休憩スペースを整備し、更衣専用のスペースとして有効利用することにより、七〇平方メートルの削減となった。
また、総合受付スペースに展示コーナーを併設し、ともに、来訪者へのアビルスペースへと、ショールームスペースを削減するとその機能を変換した。
これにより九〇平方メートルが削減できた。
このように各機能、用途、使用頻度による、きめ細かなスペース利用度を分析すれば、無駄なスペースが容易に把握できる。
H社では、こうしたきめ細かな施策により、約一六〇〇平方メートル(四八〇坪)の削減をめざして、現在実行中の段階である。
パーセンテージで見れば、約三〇%の削減である。
現有面積の「七〇%分」こそが、H杜における適正面積ということであろう。
日々おびただしい量の文書・書類がコピーされて配付され、やがてそれぞれの個人デスクにたどりつく。
問題は、それ以降の保存をどうするかである。
個人の手元に保管され、滞留している書類は、どこのオフィスでも不満やトラブルの種になっている。
どの書類を残し、どの書類を破棄するかは個人にまかされていることが多いから、ファイリングの方法に個人差が出る。
したがって、はパーソナリティに左右されるといわれるほど千差万別になる。
事例にあげる医薬品関係のI社は、ユニークなキャンペーンを展開した。
オフィス内では、あわただしく行き交い、ファイリング一人当たりの書類量を思い切ってスリム化する。
社員全員に向けて「あなたが社長になったら、オフィスコストをどれだけ適正化できるか、あるいは最も合理的なオフィス運営をどうするか」というアンケートを行い、スリム化の具体案を模索した。
採用された削減案を実現するにあたって、削減するコスト分は会社の利益には入れず、福利厚生に回すことを約束し、その代わり採用案の実現に全員が協力してほしいという条件を付けた。
基準として文書を積み上げて、その厚さを測定する(八・〇FMとは、A4サイズの文書を積み上げて八・〇メートル分の量になるという意味)。
というのは、かなり大きい収納量であり、賃借料の高いオフィスだったこともあってスリム化は火急の課題であった。
古いデータや文献が、かなり高いパーセンテージでオフィス内の文書収納什器を占領していたため、こうした保管のみの書類はみな外部移管した。
他の文書類も全社的に克明にチェックしていくと、不要なものや一過性のためのものが、けっこうスペースをふさいでいることがわかった。
これらの書類を廃棄したり外部移管したりという改善案を実行した結果、収納什器数、収納什器スペースともに三四%減、一人当たりの書類量は、実に四〇%の削減となった。
作業結果を見ると、不要なものを廃棄した分が全体の六九%で、ものを抱え込んでいたことになる。
これらを整理して、収納什器数を七二〇台から四七〇つまり七割もいらない台へと三四%減らすことができた。
また、収納什器スペースも五八〇平方メートルから三八〇平方メートルへとこれも三四%減となった。
H社はこの結果だけでは満足せず、あくまでも次のニューファイルシステムに向かうワンステップと位置づけている。
社では、オフィスコストの対売上高比に関し、毎年新たに目標を設定している。
H社の文書スリム化に対する施策は、書類の腐葉と、外部移管と呼ばれる社外の倉庫拡張への保管委託化である。
これで現状の約4〇%に相当する文書を削減してしまう。
実施後の結果を見ると、そのうち約7〇%は廃棄したことになる。
このようにして、文書が80FM(ファイルメーター)から48FMまで減少したことにより、収納什器(ファイリングキャビネット)の台数も、収納スペースも約34%削減できた。
オフィスコストの対売上高比は施設運営費÷売上高で計算される。
売上高が右肩上がりで成長する経宮環境にある企業では、つねによい数字となるので、オフィスコスト対策の必要性が見えてこない場合が多い。
しかし売上高が比較的安定的に推移する企業では、対売上高比は、オフィスコスト評価で大きな役割を果たす。
H社の経年の変化を見ると、才フィスコスト削減への施策を講じなかった時期には、対売上高比も高く推移しているが、文書スリム化などの施策実施によって好転していることがわかる。
までは三・八〜四・二%、最高時には四・五%もあったものを、一九九六年の目標は三・〇%としている。
最高時の四・五%と目標の三・〇%の差である一・五%は、金額にするとかなりの額になる。
このI社のように、経年の推移を客観的に把握したうえで目標を設定して、ワンステップずつ削減計画を実現していくことが大切ではないだろうか。
I社の場合はファシリティマネジメントを専門に扱う部門を設け、関連する情報をそこに集中・統合して目標設定や具体的計画の実施に対処してきたからこそ、このような効果を上げることが可能になったのである。
その導入で企業改革を成し遂げたことで著名なゼロックス社のD・T・カーンズ氏によれば、「ベンチマーキングは、業界のリーダーと目される企業や最大の競争相手に対抗して、製品・サービス・業務を測定する継続的プロセスである」という。
要は「他人のふり見てわがふり直せ」式に、他者のベストプラクティスから学び、それを自分の改革に結びつけることを目標とした継続的なプロセスだといえよう。
アメリカでは、このベンチマーキングの基礎となる企業のさまざまな情報がデータベース化されている。
これは一九八〇年代後半から実施されたアメリカの企業品質改善運動を奨励する「マルコム・ボルドリッジ賞」の審査基準に、「ベンチマーキング」は、ベンチマーキングが組み込まれていることが大きく影響している。
米国生産性・品質センターには国際ベンチマーキング・クリアリングハウスがあり、ベンチマーキングを試みたい企業が比較検討できるように、各企業から寄せられた基礎データベースを提供している。
日本では残念ながらいまだ企業内部の指標は公開されないことが多い。
J学校法人には優秀な施設担当者がいて、ほとんどすべてのことに対応している。
たとえば、施設の有効活用も検討され、敷地内駐車場の有料化や休日の施設貸し出しなどを実施している。
圏内では高いファシリティマネジメントを実施している団体の一つであろうしかし、担当者は現在の担当レベルでできることは残り少ないが、もっと大きな視野に立てば施策があるだろうことを認識していた。
つまり、統括的なファシリティマネジメントの実践という点では、まだ課題があるという認識である。
ところが、自社だけを見ていたのでは、何が欠けているのか、どこを強化すればよいのかが見えにくい。
そこで、Tでは、J学校法人における設備管理の現状把握をベンチマーキングの手法を導入して行った。
比較した対象は他の学校法人や企業の実践例である。
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